狭心症、心筋梗塞とは?

心臓には心臓の筋肉(心筋)に栄養を送る血管があり、冠動脈とよびます。左右2本に分かれてあり、それぞれ右冠動脈、左冠動脈とよばれ、左冠動脈は前方を栄養する左前下行枝、後方を栄養する左回旋枝に枝分かれし、全体として3本の血管で心臓全体を栄養する構造になっています。この血管の血流が悪くなり、胸が苦しい、圧迫されるなどの症状が生じる疾患を「狭心症」、血管が詰まってしまい、血流が途絶え心筋が壊死してしまう疾患を「心筋梗塞」とよびます。狭心症のなかでも、発作が頻回となり、詰まる寸前の状態にあるものを特に「不安定狭心症」といいます。

不安定狭心症と心筋梗塞は急いで治療をする必要があり、緊急で循環器科のある大きな病院での治療が必要です。時間とともに後遺症、合併症の程度が変わってくるため、夜間休日を問わずその時に受診が必要です。

狭心症には2つのタイプがある

狭心症は冠動脈の血流が悪くなることにより胸が苦しくなる疾患と書きましたが、血流が悪くなる機序として2つのことが知られています。一つは動脈硬化によるもので、血管の内腔が狭くなり血流が悪くなります。症状が労作時に生じますので、「労作性狭心症」といいます。もう一つは普段は問題のない血管が発作的にけいれんするように収縮し血流が悪くなるもので、「冠れん縮性狭心症」または「異型狭心症」といいます。労作性狭心症は運動時や坂道歩行など動いている時に症状が生じますが、冠れん縮性狭心症は主に夜間、明け方の安静時に症状が出ることが多く、病歴からある程度の推測ができます。

典型的な症状

  • 胸、みぞおち、肩甲骨の間などが締め付けられるように、または押しつぶされるように苦しくなる
  • 胸が苦しくなり、その後肩やあごの方に痛みがひろがる
  • 苦しくなると冷や汗がでる
  • 同じような負荷がかかると再現性をもって同じ症状が生じる:たとえば、毎朝出勤の際駅まで歩いている時に、きまって同じくらい歩いたところで胸が苦しくなり、立ち止まって休むとスーッと落ち着いてくる。

どのように診断する?

まずよく症状の状態をお伺いし、狭心症の特徴がありそうか判断します。動脈硬化が原因と予想される場合は、冠動脈CTや負荷をかけた核医学検査にて診断をすすめます。検査の結果狭心症がかなり疑わしい場合は心臓カテーテル検査を行い、診断と治療を行います。CTや核医学検査は当院では行うことができませんが、近隣の検査機関や大学病院に依頼しており、当院から直接予約をとり、検査だけ行って来て頂けるよう手配しておりますので、紹介状をもって受診して頂かなくてもよいようにしております。

一方、冠れん縮が原因と予想される場合は、原則としては発作時の心電図を確認することが診断の方法となります。発作が起きていない時は正常の状態であるため、心電図や画像の検査では診断することができません。夜間、明け方に発作が起きることが多いため、なかなか発作をつかまえることが難しいのが現状ですが、24時間心電図を記録するホルター心電図なども活用し、診断を試みます。濃厚に狭心症が疑われながらなかなか発作がつかまえられない場合は心臓カテーテル検査を行い、誘発試験も行って診断することもあります。

狭心症の治療

冠動脈造影労作性狭心症の場合、血管が狭窄し、血流が悪くなっているところを改善させることが根本の治療となります。従って、まず心臓カテーテル検査にて血管の狭窄度を評価し、引き続きステント留置にて狭いところをひろげる治療を行います。狭窄部位と程度によってはバイパス手術で血行再建を行うこともあります。ステント治療を行った場合は、血をサラサラにする薬を継続する必要があります。

冠れん縮性狭心症の場合、れん縮発作を予防するための薬を内服して頂きます。それでも発作が起きてしまう場合がありますが、その際はニトログリセリンの頓服をして頂き発作を抑え込みます。発作が続けて起こる場合は点滴加療が必要になることもありますので、早目に受診をして頂きます。

心筋梗塞について

心筋梗塞は狭心症の先にある病態で、血管が詰まったまま流れなくなってしまう状態です。血流が再開しないため、症状が強く、改善しないまま持続します。一刻も早く血流を再開させる必要があるため、できるだけ早くカテーテル検査ができる病院を受診する必要があります。普段ニトロを使って治まっている症状が治まらない、冷や汗を伴う強い胸痛が持続する場合などは心筋梗塞となっている可能性がありますので、救急車で受診した方がよいです。